ヨンマルマル

四百字詰原稿用紙一枚分の雑記

2020-01-01から1ヶ月間の記事一覧

岬の兄妹②

(岬の兄妹① - ヨンマルマル) リアリティ。『ジョーカー』『パラサイト』あるいは『バーニング』など、貧困と極限をテーマにした映画を、昨年から今年に掛けて少ならからず観た。それぞれにそれぞれのリアリティ演出があり、甲乙はつけがたい。ただ『岬の兄…

岬の兄妹①

クソみたいなクソのお話……と単純に断じることはできなかった。貧困の中で自閉症の妹に売春をさせる実の兄を描く映画。「人としてどうなんだ!」という罵声は作中でも浴びせられる。確かに道義にはもとる、あまりに酷すぎる、妹を売る前に自分がなんとかして…

熱源

第162回直木賞受賞作。サハリン・アイヌという民族が、日本国における明治から昭和にかけて辿った軌跡を追う歴史小説。第160回の直木賞受賞作であり、戦後沖縄の混乱と渾沌を描いた『宝島』と対を為すような作品だというのが、率直な感想です。ただ両作では…

パラサイト 半地下の家族

ポン・ジュノ監督作品初見です。NHKでの是枝裕和氏との対談で「自分は社会派の映画監督と呼ばれたくない」と監督は発言されていました。確かに、本作はあくまで(極めて)良質なエンタテインメント映画。かつ、その娯楽性の中で社会が孕む問題を再考せねばな…

グスコーブドリの伝記

仕事で付き合いのある人から「毎年元旦に同じ本を読み、その年ごとの感想を記録することで、自己理解に努めている」という習慣を聞きました。真似をしようと思い立ち、今年から1月1日は、宮澤賢治の「グスコーブドリの伝記」を読むことに。初めて触れたの…

ストレンジャー〜上海の芥川龍之介〜

「魔都・上海」という言葉をそのまま映像化したような作品でした。猥雑さ、淫靡さ、抑制的だけれど扇情的な陰影をもって、往時の上海が描かれます。1921年に新聞特派員として上海を訪れた芥川龍之介(松田龍平)が主人公の異界見聞譚。芥川の「上海游記」(…