ヨンマルマル

四百字詰原稿用紙一枚分の雑記

グスコーブドリの伝記

 仕事で付き合いのある人から「毎年元旦に同じ本を読み、その年ごとの感想を記録することで、自己理解に努めている」という習慣を聞きました。真似をしようと思い立ち、今年から1月1日は、宮澤賢治の「グスコーブドリの伝記」を読むことに。初めて触れたのは小学校低学年のころ。イーハトーブやオリザという単語や架空人物の伝記という幻想性が、当時から今まで強く印象に残っています。「好きな小説は?」と訊かれたときに、必ず挙げる一篇です。
 さて、今年の感想として三つ。主人公のブドリが気候変動に伴う社会情勢の不安定さから、めっちゃ転職していることに改めて気づいたのが一点。かつ、ブドリが苦労を重ねて立身したにも関わらず、誰をも恨まずに生きたことの強さに震えたのが、もう一点。ブドリは著者の賢治自身がそう成りたかった「聖人」の理想型なのでしょう。そして、ブドリが自分自身の理想でもあることを思い出したのが、最後の一点です。(400字)