ヨンマルマル

四百字詰原稿用紙一枚分の雑記

美人画百景/「コレクター福富太郎の眼」

 六月の終わりに、東京ステーションギャラリーの「コレクター福富太郎の眼」展へ。後輩の熱烈推薦と、鏑木清方の《妖魚》に、ちょっとだけあった仕事上の関わりのため。
 福富太郎は「昭和のキャバレー王」との異名を持つ実業家(でいいのか?)で、高名な絵画コレクター。とはいっても、金に飽かせて買い漁る成金型ではなく、確かな審美眼を持った蒐集家だったとか。勉強不足で日本画美人画の良し悪しは分からないけれど、記憶に強く刻まれた作品は何点もあった。お目当ての《妖魚》は想像よりも十倍は大きく、度肝を抜かれた。松本華洋《殉教(伴天連お春)》と島成園《春の愁い》は、共に大正の女性画家が死罪のキリシタン女を描いたもの。愁いと美しさが渾然となって胸を突かれる思いがした。歌舞伎の「切られお富」を題材とした甲斐庄楠音《横櫛》も、恐くて怖くて綺麗で良かった。
 好きだなと感じる絵、良い機会だし、もう少し探してみようかな。(四〇〇字)