ヨンマルマル

四百字詰原稿用紙一枚分の雑記

凪のお暇

 とにかく登場キャラ全員が尊い、愛に溢れたワンクールだった。
『凪のお暇』はコナリミサトの漫画が原作のTBSテレビドラマ。放映は2019年7月クール。空気読みすぎ女子の大島凪(黒木華)がモラハラ彼氏(高橋一生)と別れてボロアパートに転がり込むが、そこでイケメンの自由人(中村倫也)と出会う。微妙な三角関係と、擬似家族的なアパート住人たちとの(長屋もの的な)交流を経て、凪が本当に自分のやりたいことを見つけていく、という筋立てだ。恋愛劇を基本線としつつ、現代社会でどうやって生きるか? という問いを通奏低音としているスタイルは『逃げ恥』や『けもなれ』に続こうとする意気込みを感じた。
 どのキャラも長所短所の両面が丁寧に描かれるため、全員のことを好きになる。それは、平成〜令和の生き辛さと楽しさの双方を描こうとする作品のスタンスとも繋がっている。テレビドラマらしいテレビドラマだった。観れて良かった……。(四〇〇)(2019年10月6日)

 

[スタッフ]
原作 コナリミサト
脚本 大島里美
プロデューサー 中井芳彦
演出 坪井敏雄・山本剛義・大内舞子

 

▽追記
オープニングタイトルの出し方、テロップの入れ方、エンディングクレジットの出し方、主題曲「リブート」(歌詞最高!)の流し方、などなど、とにかく演出がポップでオシャレだった……。作品の空気をシリアスに寄せすぎない見事なバランスの取り方は、総合的な演出力にも起因している。そして脇を固めるキャストの豪華さもどえらいこと。吉田羊、三田佳子片平なぎさ、さらに武田真治まで。それぞれ個性的だけれど、一流の演技で作品世界観を壊さない、むしろドラマの迫真性とリアリティを倍加させている。中でもスナック・バブルの面倒見良いママの役として登場した武田真治、エクセレント。フルートまで吹いてたし。音楽といえば、パスカルズの劇伴もすごくすごく良かったです。やっぱりそういうの全部が『凪のお暇』という作品の世界をつくる努力だったんだな……。