ヨンマルマル

四百字詰原稿用紙一枚分の雑記

2019年10月までの読んだ本短評まとめ

 読書メーターを開いて確認したら、読んだ本の記録をまったくこちら(ヨンマルマル)に取っていなくて震えています。粛々と転記します。

真藤順丈『宝島』(講談社)2019年1月2日読了
日本人(ヤマトンチュ)である自分はこの壮大かつ不屈の沖縄人(ウチナンチュ)の物語に、どういう言葉を選べば適切なのか。本作が普及の傑作で、日本に関係する全ての人が読むべきということしか、今はわからない。

グレアム・スウィフト作、真野泰訳『マザリング・サンデー』(新潮クレスト・ブック)2019年1月3日読了
彼女が、決定的な出来事を経て何者かになる物語。中盤に現れる、これまでの全てが反転する一節には鳥肌が立つ。物語を物語ること、構成要素としてのことば、観察するまなざし、それらを丁寧に掬い上げるような作品。

リチャード・パワーズ作、柴田元幸訳『舞踏会へ向かう三人の農夫』(河出文庫)2019年1月5日読了
(上巻短評)
絡み合う3つの軸の物語。時代も場所も雰囲気もバラバラのそれら。軽い気持ちで読み出したが、上巻を終えてただただ圧倒されている。歴史、経済、文化、そして戦争。そんな鋭いジャブで殴られ続けている印象。
(下巻短評)
苦心惨憺して読んだ、易しい小説ではない。けれども、終盤で「写真で見ることの相互作用」が「小説を読むことの相互作用」に置換されていくとき、毛穴が開いていった。まだまだ理解できていない、いつか再読したい。

藤井太洋『ハロー・ワールド』(講談社)2019年3月6日読了
希望の物語。アプリ開発、ドローン、マストドン、仮想通貨とテック上のトピックが本作の横軸になっているが、大きな縦軸は「未来への希望」そのものだ。素晴らしい。前を向き上を向き、生きていく力が得られる快作。
【補足】これこそが「ホープパンク」か。

村上春樹螢・納屋を焼く・その他の短編』(新潮文庫)2019年3月23日読了
イ・チャンドン監督『バーニング』をきっかけに読んだ。同映画の原作「納屋を焼く」は簡素なお話だが、両作ともに生きることの冷たい闇を描くことが通底している。しかし、80年代にこの感性と 完成度。凄まじい。

チョ・ナムジュ作、斎藤真理子訳『82年生まれ、キム・ジヨン』(筑摩書房)2019年7月14日読了
30代の日本人男性として本書を読むと、どうしても考えさせられること。それは、作中の愚かな男たちと自分が、どれほど違うのかということだ。違うはずがない。であれば、できることは何か、さらに考えねばならない。