ヨンマルマル

四百字詰原稿用紙一枚分の雑記

2019年3月から6月までの映画100字短評まとめ

 2月のエントリに引き続いて、バタバタの所為で個別エントリが書けず……反省。Filmarksからの転記まとめと補足になります。下半期は頑張りたい……。

『天国でまた会おう』2019年3月8日鑑賞
罪人と大人と孤独な子どもの組み合わせが大好物なので満腹満足。擬古的な演出も好印象でしたしかし。ラストの展開がさすがに駆け足すぎたのでは……。ぼやかしたオチでも良いので、ゆったりと終劇して欲しかったな。
【補足】戦場に端を発する男と男の友情劇。予告篇で期待させられる内容から「ほぼそのまま」で、そのことが不満になってしまうという作品だった。食い足りない。美術(戦傷で顔面下部が崩壊した男がかぶる仮面など)は見事。あと子役は良かった。
[スタッフ&キャスト]原作&脚本 ピエール・ルメートル
脚本&監督&出演(〈アルベール・マイヤール〉役) アルベール・デュポンネル
エドゥアール〉 ナウエル・ペレーズビスカヤート

『ビール・ストリートの恋人たち』2019年3月9日鑑賞
1970年代、ニューヨーク、黒人差別。改めて、自分の無知を実感。エンタメではないからわかりやすいオチがなく、苦しみと怒りが描出されるだけ。しんどい。それでも、見なくてはいけないものがあること、再認識。
【補足】観始めた最初は「現代の話」なのかな、と思ってしまう。それは自分の無知の所為でもあるし、黒人差別が未だにビビッドな問題だから、ということもある。チャイルディッシュ・ガンビーノの「This Is America」じゃないけれど。ティッシュ(キキ・レイン)の妊娠が判明し、家族がとっておきのブランデーを取り出し、レコードに合わせて踊り出すシーンが非常に印象的。その直後のファニーの家族との争いのパートとも併せて、記憶に残っている。
[スタッフ&キャスト]
監督&脚本 バリー・ジェンキンス
原作 ジェイムズ・ボールドウィン
音楽 ニコラス・ブリテル
ティッシュ・リヴァーズ〉 キキ・レイン
〈ファニー(アロンゾ・ハント)〉 ステファン・ジェームズ
シャロン・リヴァーズ〉 レジーナ・キング

アンダーグラウンド』2019年3月31日鑑賞
不条理劇的に幕が上がり、某国を描く史劇として収束する(しない)。三部構成、最終部で全体が反転する印象。こちらが観ているものは何なのか、問い掛けられる感覚が強い。現実を描くのはリアリティだけではない。
【Filmarksでの補足①】「昼に昇る月、夜に昇る太陽」と何度も歌っているから、第3部の反転(暗転)は暗示されているのか……。陽気な音楽と「ヨーッ!」というシャウトがなんだか好きでした。空を飛ぶ花嫁やら、燃え上がりながら廻る車椅子やら、とにかく画が強い。
【Filmarksでの補足②】「この物語は終わらない」という最後の字句は重い。色々考える。劇映画だと思ってみているのは、こちらの都合だけであるかもしれない。
【補足】ナチスユーゴスラビア侵入から、ティトー政権を経て、ユーゴ崩壊までが描かれる。寓話的であり、戯画的であり、けれども歴史劇である。西ヨーロッパやアメリカ的な表現とは異なる、もちろんアジア的な表現とも異なる……生々しいものを加工せずにぶつけることが、かえって装飾的になるような、不思議なアプローチ。
[スタッフ&キャスト]
監督 エミール・クストリッツァ
脚本 デュシャン・コヴァチェヴィッチ、エミール・クストリッツァ
音楽 ゴラン・ブレゴヴィッチ
〈マルコ〉 ミキ・マノイロヴィッチ
〈クロ(ペタル・ポパラ)〉 ラザル・リストフスキー
〈ナタリア〉 ミリャナ・ヤコヴィッチ

『オアシス』2019年3月31日鑑賞
社会から疎外された2人の交流と恋と愛……というには余りにも重い作品。イ・チャンドン監督は綺麗事を許さない人なんだと改めて。そして主題の重さと響き合うように、光の蝶をはじめ映像にされる心象の美しいこと。
【補足】イ・チャンドン監督作品鑑賞の3作品名。犯罪を繰り返して檻の内外を往き来する男と、重い障害(脳性麻痺)を負って家族に打ち捨てらた女の、恋と愛の物語。主演のムン・ソリは迫真の演技のあまり、役から抜け出すためにリハビリが必要だったとか。見てはいけないものを見ているような感覚になることそのものが、自分が持つ差別意識であるのかもしれない。また、そうした思いを考えさせることが、監督の狙いなのかもしれない。そういえば『ビール・ストリートの恋人たち』のバリー・ジェンキンス監督も、イ・チャンドン監督も、共に小説家志望であったとアフター6ジャンクションで聴いた気(うろ覚え)がする。あと、ジャケットなどで使用されている幸せそうな2人は、絶対に存在しえない(劇中も、そして劇後も)記念写真である。
[スタッフ&キャスト]
監督&脚本 イ・チャンドン
〈ホン・ジョンドゥ〉 ソル・ギョンゲ
〈ハン・コンジュ〉 ムン・ソリ

ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』2019年6月8日鑑賞
ゴジラ、ギドラ、ラドンモスラは最高でした。本当にありがとうございました。怪獣を観て「マジで怖い」と感じたのは久しぶり。しかし、それ以外が雑過ぎたのでは……。怪獣だけで、怪獣映画は成立しませんですね。
【補足】ラドン復活シーン、ラドンとギドラのドッグファイトシーンなど、ラドン周りは印象的だった。モスラもまあとんでもないことになっていたけど、カッコいいから良し。ただ。人間を描くのが雑過ぎる余り、全員がIQ10ぐらい見えるというのはどうしたことだろうか。それでは映画全体を楽しむことができなかった。謎の海底ゴジラ神殿に「ゴジラ」とカタカナで書いてあるのも、笑えなかった。
[スタッフ&キャスト]
監督 マイケル・ドハティ
脚本 マックス・ボレンスタイン、マイケル・ドハティ、ザック・シールズ
〈ドクター・セリザワ〉 渡辺謙

『主戦場』2019年6月9日鑑賞
不都合な真実から目を背け続けることは、あるいは個人の自由なのかもしれない。しかしカメラに映る、杉田水脈藤岡信勝櫻井よしこといった人々の「美しくない様」を見てしまった以上、同じ列に与したくはない。
【補足】劇中で右派的とされた人々から、インタビュー映像が「自分の意図とは異なる使われ方をしている」と場外乱闘になっているそうな。その事実だけを鑑みても、いったいこの映画を撮ったカメラが何を映したのか、わかりそうなものではないか。強くそう思う。
[スタッフ]
監督&脚本&撮影&編集&ナレーション ミキ・デザキ

『神と共に 第一章:罪と罰』2019年6月15日鑑賞
大霊界』をすごくカッコよくして『BLEACH』をぶち込んだ感じ。直球どエンタメでベタベタだけど、泣かしに掛かってくる。ドクチュン(キム・ヒャンギ)と泰山大王(不明)が良かった。何事も振り切るって大事。
【補足】いわゆる死者(亡者)の地獄巡りのお話。案内人であるヘウォンメクとドクチュン、そしてカンニムのキャラクターがくっきりはっきりしていて爽快感が強い! かつ、適度にデフォルメされつつ、またアニメ的マンガ的要素をいいとこ取りして形成されている、閻魔大王やら泰山大王のキャラクターデザインが秀逸。ドクチュンは本当に可愛い、スピンオフが観たい。あと、男性2人に女性1人の組み合わせは、やはり配置的に鉄板なのか。
[スタッフ&キャスト]
監督&脚本 キム・ヨンファ
〈カンニム〉 ハ・ジョンウ
〈ヘウォンメク〉 チュ・ジフン
〈ドクチュン〉 キム・ヒャンギ