ヨンマルマル

四百字詰原稿用紙一枚分の雑記

彼女がその名を知らない鳥たち

 蒼井優がクズ女を演じ、相手役を阿部サダヲが務める。それだけで観たかった作品。
 期待は裏切られず。生臭くて温かい、腐臭がプンプン漂う映画だった。
 綺麗、美しい、カッコいい。他人に自慢できる何かに囲まれて生きていたい、などと考えるのが人間の性。けれど、綺羅綺羅なだけではいられない。だって私たちは、飲んで食って性交する糞袋だもの。かつ私たちは面倒臭い脳味噌のある生き物なので、物事が常に反転する。きれいはきたない、きたないはきれい。だとしたら、人を愛することは、きれいなことか、きたないことか……どっちなのか。本作は問うてくる。
 セックスシーンと食事のシーン、それぞれのバランスがみごと。中でも強く残るのは、かきあげうどんやすき焼きなど、日常的な食事シーンだ。朝井リョウがラジオで言っていた「食事をする光景を人に見せるのは、セックス見せるのより恥ずかしい」という言葉が、ようやく理解できた気がする。(四〇〇)