ヨンマルマル

四百字詰原稿用紙一枚分の雑記

(きっと)思春期のまち/街の上で

 下北沢の古着屋でバイトしたかったんです。シモキタに住んで、バイトして、飲んで笑って彼女を見つけて……。そういう生活に死ぬほど憧れていた時期があります。十五年以上むかしのことです。
 主人公、若葉竜也演じる荒川青は十五年前の理想像そのもので。最初はちょっと完璧すぎて嫌になるぐらいで。でも物語が、青と四人の「下北沢の女」との別れやら出会いを巡ってゆっくり進んでいく中で、どんどん引き込まれて。
 特筆すべきは四人の中のひとり、城定イハ(中田青渚)でしょう。都合良さげな年下女子と見せかけて、毒っ気たっぷり&秘密もいっぱい。けれど本音トークしかしない潔さもある不思議な魅力のキャラクターに仕上がってました。いちばん「下北沢の女」っぽかったかも。
 イハにも出会えず、青にもなれない我が人生。それでも「下北沢の街に憧れた時期を忘れたり誤魔化したりすんなよ」と、訥々とスクリーンから語りかけられた心持ちでいます。(四〇〇字)

スタッフ
監督/今泉力哉
脚本/今泉力哉、大橋裕之
音楽/入江陽

キャスト
古着屋勤務の主人公、余計なことを最悪のタイミングで言う/若葉竜也(荒川青)
青の元彼女、一番考えていることが読みづらかったです/穂志もえか(川瀬雪)
古本屋勤務、一番良い人だったんじゃないかと/古川琴音(田辺冬子)
学生映画の監督、一番自分のことを考えている/萩原みのり(高橋町子)
学生映画の助手、一番普通で一番素直で一番タチが悪い/中田青渚(城定イハ)
友情出演/成田凌(間宮武)

ドンソクさんに恋をして/新感染 ファイナル・エクスプレス

 高速鉄道の車中でゾンビものを2時間って、お話がもつのだろうか……という心配は完全に杞憂で。マ・ドンソクに見とれていたら、あっという間でした。ドンソクさん、なんちゅうカッコいいんじゃ……!
 ゾンビからのサバイバルという主題どおりの内容ですが、全体的にややハードモードか。動的なシーンの迫力はもちろん、静的なシーン、特に主人公の娘・スアン周辺の画作りの美しさが印象的でした。決定的な場面で、カメラが引きになったり、シルエット撮影になったりするのも好き。総じて、端整な映画だったと思う。
 で、ドンソクさんですよ。ゾンビをステゴロで吹っ飛ばす人、はじめて見たかも……。フィジカルの強さだけじゃなく、メンタルというか生きる心構えの強さも示して、主人公を感化していく様は素晴らしすぎます。なにより、強面なのにめちゃくちゃ優しい。あ、主人公のコン・ユもドンソクさんのおかげで、途中から飛躍的にカッコよくなります。(四〇〇字)

スタッフ
監督/ヨン・サンホ
脚本/パク・ジュスク

キャスト
ゾンビをパンチでやっつけるカッコいいおじさん/マ・ドンソク
主人公ファンドマネージャー/コン・ユ
主人公の娘、歌がうたいたい/キム・スアン
ドンソクの妻で妊婦、あなたは偉い/チャン・ユミ
野球少年、よくがんばった/チェ・ウシク
人間の優しさと温かみを大事にする、野球部の応援少女/アン・ソヒ
人間のクズ/キム・ウィソン

おバカな二人、翔ぶが如く/21ジャンプストリート

 ハイスクールでは別々のカーストだった二人が、ポリスアカデミーで再会して親友に。その後、よりにもよって麻薬売買が横行しているハイスクールへの潜入捜査を命じられる(この潜入捜査専門の所轄署的なものの名前が「21ジャンプストリート」)。しかし、今度は現役高校生時代と真逆のカーストに所属することになって……。という、完璧なプロット。オシャレでダサくて、下ネタ満載(やや使い過ぎ)で、きっちりアクションもやれば人死も出る、ポンコツ警官モノの、ド王道でした。
 ナード(ジョナ・ヒル)とマッチョ(チャニング・テイタム)のバランスが良いんだよな……。それぞれ、底抜けのバカなんだけど憎めず、気がつけば応援してしまう。アメリカ映画における「おバカなふたり」の物語って、やっぱり最強だなあ。『ブックスマート』を観たばかりだってのもあるけど。そうそう、アイス・キューブの役(上司の警部)は色々と美味しすぎると思います。(四〇〇字)

スタッフ
監督/フィル・ロード&クリストファー・ミラー
脚本/マイケル・バコール

キャスト
ナードの方(結局は役得してた気がします)/ジョナ・ヒル
マッチョの方(最後まで本当に良い奴、身体張るし)/チャニング・テイタム
ディクソン警部(怒れる教会の男)/アイス・キューブ

【追記】
1980年代の終わりに同名タイトルのテレビドラマシリーズがあり、ジョニー・デップの出世作だったことを、あとから調べて知りました。デップさん、後半にカメオ出演してます。