ヨンマルマル

四百字詰原稿用紙一枚分の雑記

アンチゴーヌ

 新年最初のエントリは観劇から。映画に比べてハードルが高いので敬遠しがちだったけれど、昨年、ただ「黒木華が生で観たい」というだけで行った『お勢登場』が滅法面白くミーハーな欲求も満たされたので、調子に乗って2度目へ。今回のお目当ては主演の蒼井優、そして生瀬勝久だ。
 ギリシャ悲劇をフランスの劇作家(ジャン・アヌイ)が翻案したもの、……を更に日本語訳してアレンジしたのが本作『アンチゴーヌ』。国禁に触れた王女アンチゴーヌ(蒼井優)と彼女を処刑せねばならなくなってしまったクレオン王(生瀬勝久)の、対峙と葛藤を描く物語だった。見所は兎にも角にも主演のふたり。特に蒼井優は、奔放さが熱を帯びることで静かな狂気へ変換される様がとても美しかった。加えて。コロスの一人が謳っていた「悲劇は観衆を裏切らない。何故なら悲劇は悲劇である以上、その悲しい結末を変えることが無いから」というセリフは心に深く突き刺さっている。(四〇〇)

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ダイヤモンド・アイランド

 東京外大の東南アジア映画特集にて鑑賞。ひとことで内容を言えば「上京物語」だ。カンボジアの首都プノンペン、その再開発地区の建設現場に農村から出てきて働く主人公が、行方不明の兄と再会したり、恋に落ちたりした後で、青春の蹉跌を味わう、そんなお話。
 10月の東京国際映画祭で見た短編作品群よりも、遥かに分かりやすかった。きっとそれは「モダニズム批判」という物語の主軸があったからだろう。乱開発、物質主義、西欧文化礼賛、拝金、等々への批判である。そして主人公のドラマは、この批判の軸とオーバーラップしている。
 しかし「それで良いのかな?」と疑問も感じた。モダニズム批判はわかりやすいけれども、本当にカンボジアに生きる人々の心からの言葉なのだろうか、という筋からの疑問だ。プノンペンで普通に生きている人たちが、開発と近代化の進む首都のことをどう捉えているのか、伝わってくるようで伝わってこないのがもどかしい。(400字)

កោះពេជ្រ/Diamond Island - Trailer - YouTube

Nhà đầu tư trẻ nhất Việt Nam - Đảo Kim Cương - Diamond Island - YouTube

ブレードランナー2049

 1980年代生まれのため、前作のリドリー・スコットブレランに思い入れが無い、すみません。ただブレランに影響を受けたコンテンツには、たくさん親しんできたように思う。攻殻機動隊とか、ロックマンXとか。もし前作に思い入れがあれば、見方はもっと違ったものになっただろう。たとえば、閃光のハサウェイが来年アニメになるとしたら、とんでもなくテンションが上がるだろうから。
 そんなこんなで、何らかの義務感から鑑賞した本作、ごめんなさい……なんとも言えなかったです。同じ監督の『メッセージ』でも寝落ちしてしまったので、相性が悪いのかもしれない。
 ひとつだけ。サイバーパンクのビジュアル表現が、更新されたり発展したりしていない件については、明確に不満を持った。前作への強いリスペクトから(色々な意味で)美しい未来都市が描かれているが、そこに新しい表現への挑戦は無いように感じられた。穿ち過ぎだろうか。(四〇〇)