ヨンマルマル

四百字詰原稿用紙一枚分の雑記

新版 女興行師 吉本せい

 手に取った直接のきっかけは2017年10月現在放映中の『わろてんか』だが、吉本せいについてはずっと気になっていた。だからこの一代記、ようやく読めて良かった。
 ヨシモトと言えば吉本新喜劇である関西出身の自分にとっては、その吉本が第二文藝館という場末の落語小屋から始まったこと、漫才が「万歳」であり、サラリーマンのための娯楽芸能として発明されたこと、立役者がエンタツアチャコであったこと、何かも知らず、であるが故にとても新鮮だった。
 著者の筆致は、吉本せいという人間への愛憎が混交しているように思う。成功者への安直な肯定礼賛ではなく、かといって無思慮な貶めだけを綴っているわけでもない。読み始めは「もっと素直に褒めれば」と感じたが、終盤に至ると漂う哀感に読む心持ちがシンクロするようになった。見たこともない時代への郷愁だったのだろうか。あるいは大阪という土地そのものへの今更生まれた憧憬だったのか。(400字)