ヨンマルマル

四百字詰原稿用紙一枚分の雑記

異人たちとの夏

 『廃市』と並んで観たいと思っていた大林宣彦監督作品をようやく。40代の主人公(風間杜夫)が10代のときに死別した30代の父母(片岡鶴太郎秋吉久美子)と再会するという、ノスタルジックさとファンタジー感溢れる一本。……と、それは良いのです、孤独な男と若い両親との不思議な邂逅というテーマ自体は、興趣に溢れている。ただ、風間杜夫の周囲には謎の美女(名取裕子)も現れて、この女が……とにかくもう……色々ぶっ壊してしまっている、悪い意味で。郷愁や愛別の気持ちだけで映画を構成してはいけなかったのだろうか。
 ただ本当に、寿司職人の父を演じる片岡鶴太郎とその妻を演じる秋吉久美子は、良かった。冷房も扇風機も無い浅草の安アパートの二階の一室、諸肌脱ぎになって興じる花札、親子三人で囲む今半のすき焼き……等々。自分はそうした時代を知らないけれども、無条件に美しいなあと感じてしまう何かがフィルムに映し込まれていた。(四〇〇)

 

あの頃映画 「異人たちとの夏」 [DVD]

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