ヨンマルマル

四百字詰原稿用紙一枚分の雑記

戦争に間に合う/『この空の花 長岡花火物語』

 戦争のことなんて知っている。学校で習った。本で読んだこともある。半世紀以上前に悲惨なことがあった。だから繰り返してはいけない。……こんな風にして、理解した気になっていました。なんという浅はかな態度であることか。本作で描かれた長岡空襲のこと、何も知らなかったのに……。
 大林監督の『海辺の映画館』の感想を伝えた幾人かから、絶対に観た方が良いと薦められた『この空の花 長岡花火物語』。現代の人間が戦争の記憶と直接体験的に向き合うというプロットは両作に共通しており、また「次の戦争(の抑止)に間に合うように」というメッセージも通底している。
 遺さなければ残らないという、当たり前のことについて改めて考える。B-29の轟音も焼夷弾の恐怖も、意思を持って残さなければ忘れさられてしまう。創り手はもとより、受け手も確かに胸に刻み、それらを次世代に伝えねばと思う。ただの受け手にも、伝えていくことは、できるはず。(四〇〇字)