ヨンマルマル

四百字詰原稿用紙一枚分の雑記

第四の壁を壊し、観客を殴る。グーで殴る。/『海辺の映画館―キネマの玉手箱』

 映画にできることってなんだろう。大林宣彦監督は、本作『海辺の映画館―キネマの玉手箱(英題:Labylinth of Cinema)』を通して「それは、未来を変えることだよ」というメッセージを遺された。と、思う。
 戦争のことを知りたい、と銀幕に消えた少女を追って、三人の青年が映画の中へ飛び込む。様々な戦争に関連する映画作品の登場人物として、少女と青年たちは生きて死ぬ。そして繰り返し問う。「これが戦争なの? これで良いの? 本当に良いの?」
 メッセージ性というかメッセージだけで構成された作品だ。「戦争を無くせ、未来を変えよ」という直言。劇中劇と劇本体と劇の外がぐちゃぐちゃにかき回され、すべての壁という壁は壊される。やがて、観客の自分は素っ裸の状態で大林監督にグーパンチされる。この愚直なまでのストレートさが、2020年のいま、一番必要なことなのではないか。騙し誤魔化し衒いの無い、真摯な一撃が。(四〇〇字)