終わらない歌/『タゴール・ソングス』
知らないことを知れるのが映画の良いところ。ただ知らない情報というだけではなくて、知らない音を、知らない景色を、知ることができる。インドやバングラデシュという土地がこんなに美しいことを、私は何も知りませんでした。この作品を観るまでは。
非ヨーロッパ圏で初のノーベル文学賞受賞者で、詩聖とも呼ばれるタゴール。彼のうたが百年以上の時を超えて、インドやバングラデシュで歌い継がれていることを追ったドキュメンタリー作品『タゴール・ソングス』。会社の後輩に紹介されて鑑賞しました。
ベンガルの人も、ダッカの人も、みんなみんなタゴールのうたを歌う(そもそもインドの国歌もバングラの国歌も作詞はタゴール)。老若男女が歌う、ポップスでも歌う、ラップでも歌う(しかもそれぞれめっちゃ上手い)。私たち日本人には「そういうもの」は無い。だからとても羨ましいと感じました。
佐々木美佳監督作品。彼女の作品、また観たい。(四〇〇字)
追記
作中で何度も引用されている、
もし 君の呼び声に誰も答えなくても ひとりで進め
もし 誰もが口を閉ざすなら
もし 誰もが顔をそむけ 恐れるなら
それでも君は心開いて 心からの言葉を ひとり語れ
(タゴール「ひとりで進め」より)
は、押井守監督の『イノセンス』で引用されているブッダの言葉、
孤独に歩め
悪を為さず
求めるところは少なく
林の中の象のように
を思い出させられました。両方インドルーツなのか……。