ヨンマルマル

四百字詰原稿用紙一枚分の雑記

観るタイミング、観れないタイミング/『日本沈没2020』

2020年4月から7月という時期(前段として)

 かれこれ3ヶ月ほど映画を観ていません。理由はいくつもあるのですが、コロナ渦という状況に振り回されてしまった、それでなんとなく観る気になれなかった、というのが大きいです。また、映画館に行こうとしては「感染者が再び増加」のニュースを見て出鼻をくじかれ続けているというのもあって……。いま現在もなかなか「映画」という気分にならないので、切り替えて配信ドラマを観ています。あとはアニメも。
 というわけで、Netflixで配信が開始された湯浅政明監督作品『日本沈没2020』。「1話だけ観てみよ」と思ったのが運の尽き、全10話一気観しました。控えめにいって最高。不勉強なもので原作の小松左京『日本沈没』は未読、森本司郎監督『日本沈没』(1973)と樋口真嗣監督『日本沈没』(2006)も未視聴で。事前情報がほとんど無い状況での鑑賞体験が、かえって良かったのかも知れない。後半はじゃばじゃばに泣いてしまった。(400字)

それでも観たいと感じるもの(感想として)

 湯浅政明監督作品は『ピンポン THE ANIMATION』と『夜は短し歩けよ乙女』を観ています。よくよく思い出すと、前者は実写映画が良作(窪塚洋介!)で、後者は原作小説が大人気で、それぞれハードルが高いアニメ化だったんだな。『日本沈没2020』も、原作と先行作品が伝説的で、かつポストコロナ時期での公開、かなりハードルが高かったように思います。結果、本作はそれを軽やかに飛び越えていますが。
 すごい、と感じた部分は大きく2つ。まず、人間の死をドラマチカルに描かないこと(を逆説的にドラマチカルに描いていることも含め)。災害における死は、ドラマではなくて理不尽と不条理の塊だから。もう1つは、作中で繰り返される「写真撮ろうよ」と回想のモノローグが、最終話で「アーカイヴの大切さ」という主題(=災害からの復興の重要鍵)に回収されていること。緻密に創り込まれた大傑作。このタイミングで観られて良かった。(400字)