ヨンマルマル

四百字詰原稿用紙一枚分の雑記

遠い昭和のランドスケープ①/『時をかける少女』

 大林宣彦監督、ご冥福をお祈り申し上げます。大林作品は『異人たちの夏』しか観たことがなかったため、この機会に有名な「尾道三部作を!」と意気込んでみたけれど、一作目『同級生』の配信が無く……二作目の『時をかける少女』から。
 偶然にもタイムリープとテレポーテーションの能力を得てしまった少女・芳山和子(原田知世)をめぐる青春譚なのだけれど、その青春パートが全体の3分の2以上で、いわゆるSF的な要素は終盤の展開に集約されている。このため、昭和の学生グラフィティ的な印象が強かった。本作が公開されたのは1983年で、私が生まれた翌年。両親が自分の出産前後に見ていたのは、本作のような情景だったのだろう。6年後に昭和は終わるのだけど、そんな気配は微塵も感じられない。映し出されたのんびりした平和な日常が永遠に続いていくのではないか……と思わされてしまうところが、大林監督の「尾道作品」の魅力なのかもしれない。(遠い昭和のランドスケープ②/『時をかける少女』 - ヨンマルマル)(400字)