ヨンマルマル

四百字詰原稿用紙一枚分の雑記

ストレンジャー〜上海の芥川龍之介〜

「魔都・上海」という言葉をそのまま映像化したような作品でした。猥雑さ、淫靡さ、抑制的だけれど扇情的な陰影をもって、往時の上海が描かれます。1921年に新聞特派員として上海を訪れた芥川龍之介(松田龍平)が主人公の異界見聞譚。芥川の「上海游記」(未読、読まねば)が原案で、脚本は『ジョゼと虎と魚たち』『カーネーション』の渡辺あや。また作中には「アグニの神」(既読、ただし記憶が怪しい)からの引用も。
 芥川の自殺の理由がこの上海訪問にあるのでは、という仮説が主軸にあるのだけれど、それよりも細部の美しさに目を奪われます。例えば、惨殺された主人の血だまりに浸したビスケットを食べる妾の女とか。あるいは異国の娼館で迎える歪な朝の風景とか。ちなみに同じ時代のアメリカはジャズ・エイジで、フィッツジェラルドやアル・カポネが活躍していたと考えると、不思議な心持ちになります。
 視聴を激しく勧めてくれた後輩に感謝。(400字)