ヨンマルマル

四百字詰原稿用紙一枚分の雑記

さらざんまい

輪るピングドラム』より8年、そして『ユリ熊嵐』より4年、ようやく公開された幾原邦彦監督の新作『さらざんまい』を、先日観終わった。
「カッパにされた少年たちが、カッパゾンビの尻子玉を抜きにいく」というのが粗筋。それだけでは意味がわからない……というのは幾原監督作品の通常仕様だ。ストーリーはある意味飾りで、大事なのは変奏されて繰り返されるテーマである。『ピンドラ』のときは輪廻生存戦略、今回はつながり欲望(あるいは作中でも連呼されるのでテーゼとも言えるか)。
 現代社会では抑圧され否認されがちな、つながりや欲望の解放を一稀と燕太と久慈とカッパの出会いに仮託したのが本作である。そして、真につながりや欲望と向き合う必要があるのは、少年やカッパではなく、大人たちなのではないかと思う。一方で、つながりや欲望は他者を傷つける歪な形で発露するケースもあり、そうした暴発への警鐘というメッセージも感じた。(400字)2019年11月28日鑑賞