ヨンマルマル

四百字詰原稿用紙一枚分の雑記

アイリッシュマン

 マーティン・スコセッシ監督作品は『タクシードライバー』と『ギャング・オブ・ニューヨーク』ぐらいで、ほとんど観てきていない。これからちゃんと観ねばと反省。それはそれとして『アイリッシュマン』。ロバート・デ・ニーロアル・パチーノジョー・ペシの名優3人が、いわゆるマフィア的世界を生きる男たちとその関係性、そして末路を描くNetflix配信専用映画だ。
 デ・ニーロ演じるフランク、彼の「殺し」のシーンの素っ気なさが印象的である。ただ対象の前に現れ、至近距離で頭部を撃ち、速かに逃走する、それだけ。不必要なものが何も無い。作品全体としても、事実と事件が淡々と進行していき、とてもドライだ。なのに3時間半という長尺を食い入るように観てしまった理由のひとつは、無駄が削ぎ落とされたために発生する美しい緊張感ゆえでは、と思う。暴言や暴力よりもただ存在する事実の提示だけで詰められていく怖さ、とも言えるだろう。(400字)2019年12月8日鑑賞