ヨンマルマル

四百字詰原稿用紙一枚分の雑記

三人の夫

 恐らく精神に何らかの障害を持つと思しき女性が、生きていくために身体を売る。そして、彼女の稼ぎに三人の「夫」を称する男たちがたかる。彼らは香港の陸地に家を持てない、貧しい船上生活者。人魚のように水の上で日々を送る……。東京国際映画祭で鑑賞、フルーツ・チャン監督作品。
 非常に重いテーマを扱った作品だが、社会批判や風刺が目的ではないように感じた。状況をただ描くだけで、解決が目指されるわけでもなければ、何らかのメッセージが込められているわけでもない。性欲、というか欲望が持つおぞましさをそのまま、剥き出しにして配置しているだけ。 だから見る側は、人間の愚かしさや醜さに正面から向き合わなくてはいけない。逃げられない。しんどい。
 どこか、遠くの世界の物語にしておきたくなる。けれども、差別も売春も貧困も、ほんのすぐそばに息づいていることは知っているのだ。この映画は「知っているよな?」と囁いてくるのだ。(四〇〇)


三人の夫 公式インタビュー|Three Husbands Official Interview