ヨンマルマル

四百字詰原稿用紙一枚分の雑記

誤解

 アルベール・カミュ原作。稲葉賀恵演出。帰郷した放浪息子が、母と妹に「誤解」から殺されてしまう物語。
 カミュ自身の代名詞ともなっている「不条理」とはどういう意味なのだろうか。日本国語大辞典「不条理の哲学」の項目では、カミュの思想とした上で「意味も希望も見出せないという人生の不条理」を、「克服できないのに克服しようとして努力」することの強調に哲学性を見い出す、とある。この『誤解』は、正にこの説明通りの作品と言える。
 かつて『異邦人』を読んだ時にも朧げに感じたことだが、カミュは不条理を嫌がっているわけではないように思う。とはいえ、好んでもいないだろうが。むしろ、不条理に殊更抗ってみようとしたり、神の所為にして難詰する人間を非難しているような。ただ、そこをあえて見せることに残酷な悪趣味さもあるのかな。迷える子羊の救済を明確に拒否する終劇直前の神の宣告には、いっそ清々しい気持ち良さを感じるから。(四〇〇)