ヨンマルマル

四百字詰原稿用紙一枚分の雑記

万引き家族

 何が凄いって「万引きなどしなくても生きていける」家族を描いていること。観終わって、感想漁りをしているときにそのことを教えられて「うわああ」となりました。「万引きしないと生きていけない貧困層」の物語ではない。だからこそ余計に、苦しい、醜い、美しい。
 綺麗は汚い、汚いは綺麗の極致。家族が住んでいる陋屋の汚いこと美しいこと。浴室の造形すごかった。あとは夏と素麺とセックス。ただただ圧倒されました。すべてが良すぎる。
 キャストは全員超絶技巧でしたが、ナンバーワンは安藤サクラ。「捨てたんじゃない、拾っただけ」という作品テーマそのものであるセリフは重い(対峙しているのが池脇千鶴だということにも、ゾクゾク)。また、何も喋らないときの瞳の演技にも震える。
 こうした作品が「日本の映画」として世界に公開され、かつ大きな評価を得ていること、誇りに思います。万引きから生まれた家族だから、偽物なわけでは、ない。(四〇〇)