ヨンマルマル

四百字詰原稿用紙一枚分の雑記

怒り

 原作を読了して約半年後の鑑賞、とてつもない完成度での無駄のない映像化だった。
 原作でも映画でも、好きだったのは渡辺謙宮崎あおいの親子。房総南部の鄙びた漁港に暮らすふたりは、何故だか強く印象に残った(そこに池脇千鶴が入ってくるのも憎いキャスティングだ)。描かれた3つの視点の中で、最もリアリティがあったというのはもちろんなのだけれど、「幸福」そのものに焦がれ続ける親と娘、というキャラクターに哀感を覚えてしまったのだ。歌舞伎町から特急電車で娘を連れ戻す父親、というシーンにも強く持っていかれるものがある。何だろう、言語化が難しいけれど、郷愁とかそういうものに似た、何かである気はする。
 あとは森山未來。良かったなあ。「人を見下すだけでギリ自分保ってる奴」という表現、そのままの存在感だった。黒子削ってるシーンも素敵。虚無感の権化とも言えるのか。他キャストもいちいち光っていた。とにかく贅沢な映画。(四〇〇)

 

怒り

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