ヨンマルマル

四百字詰原稿用紙一枚分の雑記

ティファニーで朝食を

 ハッピーエンドにならなければ良いのに、後半になって少し、そう願ってしまった。ハッピーエンドになってしまうと、都会で生きる孤独な男女が結ばれる、ありふれた物語になってしまうから。
 ……などという個人的な見解がどうあれ、この作品は1960年代の華やかなニューヨークでのシティ・オブ・ライフの中で、虚無感を抱えながら生きる男と女が恋愛、というか偶然が咲かせた絆に救いを見出す物語、なのだろう。ただ、半世紀以上経ってから今更はじめて視聴する人間としては、もう少しだけ穿った見方をしてしまうというもので。
 主演のオードリー・ヘップバーンは美しい。20代の頃と比較して枯れた雰囲気も、役柄から来る擦れた空気も、プカプカと煙草をふかしては酒をかっ喰らうその姿も。美しいがゆえに、哀しくもあったし寂しくもあった。かつてこういう時代があり、それをある種の記録として見ることができる自分たちは幸福なのだろう、きっと。(四〇〇)