ヨンマルマル

四百字詰原稿用紙一枚分の雑記

ティファニーで朝食を

 ハッピーエンドにならなければ良いのに、後半になって少し、そう願ってしまった。ハッピーエンドになってしまうと、都会で生きる孤独な男女が結ばれる、ありふれた物語になってしまうから。
 ……などという個人的な見解がどうあれ、この作品は1960年代の華やかなニューヨークでのシティ・オブ・ライフの中で、虚無感を抱えながら生きる男と女が恋愛、というか偶然が咲かせた絆に救いを見出す物語、なのだろう。ただ、半世紀以上経ってから今更はじめて視聴する人間としては、もう少しだけ穿った見方をしてしまうというもので。
 主演のオードリー・ヘップバーンは美しい。20代の頃と比較して枯れた雰囲気も、役柄から来る擦れた空気も、プカプカと煙草をふかしては酒をかっ喰らうその姿も。美しいがゆえに、哀しくもあったし寂しくもあった。かつてこういう時代があり、それをある種の記録として見ることができる自分たちは幸福なのだろう、きっと。(四〇〇)

 

 

 

Re:CREATORS 5〜12話

 1クールの後半相当を視聴。キャラ特性による死亡フラグというのはあるのだろうか。魔法少女まみかは「これ死ぬな」と暗い予想をしていたら本当に落命した。流血の表現が衝撃的。創作物の主人公たちも、現界した以上は、現界した先の物理法則に従うことになるようだ。なんらかの形で復活するのではないかと想像しつつも、それをやると何でもありになるので……。ただ心情的には再登場してほしいと願っている。だって彼女が主張していた「(魔法少女としての正しい責務を果たさねば)元の世界の人たちに顔向けできない」という言葉は、美しいものだから。
 一方で初登場以降、「バランスブレイカーなんじゃねえか」という危惧と共に圧倒的な存在感を示す築城院さん。彼女はロアナプラにいてもおかしくない。好きか嫌いかで言うと嫌いなキャラクターではあるが、軍服の姫君を除けば敵役らしい敵役の存在しない本作において、ヒールの真打ちとなるのか、どうか。(四〇〇)

おんな城主直虎 第三十回「潰されざる者」

 今川が本気を出せばすぐにでも井伊を取り潰すことができるという、シンプルで残酷な現実。それが改めて明らかになった放送回。どうしても今川家っていうのは、桶狭間で負けた家という印象が強いので、色々言い掛かりをつけてきていても、実は大したことないのだろう、何とかなるのだろう……と思ってしまいがちだった。けれども実際問題、このとき駿河遠江を治めていた大名家は今川家であり、西の徳川、北の武田、東の北条、いずれの大名家とも渡り合い均衡を保ってきているのだ。井伊谷の小さな国人領主のひとりが抗ったところで、巨獣に刃向かう蟻に等しい。
 だからこそ、政次の悲愴な決意が、刃を抜かせたのだろう。もはや小細工の段階ではない。そもそも今川家自体が存亡の危機に晒されている、そういう時勢なのだから。そんな政次の姿と呼応するかのような、直虎の「今川の下より這い出るまで〜」「大死一番絶後再甦」のセリフが、特に印象に残った。(四〇〇)