ヨンマルマル

四百字詰原稿用紙一枚分の雑記

ブレードランナー2049

 1980年代生まれのため、前作のリドリー・スコットブレランに思い入れが無い、すみません。ただブレランに影響を受けたコンテンツには、たくさん親しんできたように思う。攻殻機動隊とか、ロックマンXとか。もし前作に思い入れがあれば、見方はもっと違ったものになっただろう。たとえば、閃光のハサウェイが来年アニメになるとしたら、とんでもなくテンションが上がるだろうから。
 そんなこんなで、何らかの義務感から鑑賞した本作、ごめんなさい……なんとも言えなかったです。同じ監督の『メッセージ』でも寝落ちしてしまったので、相性が悪いのかもしれない。
 ひとつだけ。サイバーパンクのビジュアル表現が、更新されたり発展したりしていない件については、明確に不満を持った。前作への強いリスペクトから(色々な意味で)美しい未来都市が描かれているが、そこに新しい表現への挑戦は無いように感じられた。穿ち過ぎだろうか。(400字)

HiGH&LOW THE MOVIE3 / FINAL MISSION

 昨年からハイローユニバースを楽しませて頂き、ザム1→レッレ→ザム2と、劇場版を心から堪能させて頂いた。いや、今もなお楽しんでいる。だからこそ言いたい、副題の「FINAL」ってなんやったんやと。……まあ仕方がないです、九龍グループがザム3だけで壊滅したら、その方がおかしいもんね。
 というわけでのG−SWORDと九龍の直接対決、個人的な最大の見処は「高層ビル屋上からの青空ゴルフ打ちっ放し」かなあ。バトルシーンは敵のネームドがあんまり出てこなかったので、正直緊張感がなかったかもしれない。いや、スモーキーがあれするシーンでひさびさに出てきた家村会の二階堂は良かったけれども。つまりあれです、もっと敵ネームドの中ボスクラスが出てきて欲しかったってことです! ヤバそうなひとはたくさん出てたんだけどな(スナイパーの人とか)。
 なんにせよ、物語が未来に繋がっていくのは素晴らしいことです。来年も、楽しみ。(400字)

IT/イット “それ”が見えたら、終わり。

 ダン・シモンズの『サマー・オブ・ナイト』という作品がある(惜しむらくは既に絶版)。アメリカの田舎町を襲う怪異、立ち向かう少年少女たち……と、大まかな流れはほぼ一緒。シモンズの同作をこよなく愛する自分にとって、今回の『IT』も同じぐらい愛せる作品だった!
 まずモンスターvsボーイズ&ガールズというプロットが黄金すぎる。御飯を何杯でも食べられる。しかもその主人公たちが「ルーザーズ・クラブ」と自称するぐらい、最初はカッコ悪いいじめられっ子たちなのだから、余計に彼ら彼女らの成長のドラマが映える。男子5人に女子1人というメンバー構成も尊い。そのヒロイン、べバリー(ソフィア・リリス)は洋の東西を問わない男子諸兄の妄想の具現なのではと思えるぐらいキュートだ。
 原作では50年代末の話が、今回の映画では88年に。自分もちょうど小学生ぐらいだったので、だからこその強烈な親近感も、あったのかもしれないなあ。(400字) 

カンボジア若手短編集

 東京国際映画祭にて。ホームレスの親子を撮った『ABCなんて知らない』、クメール・ルージュ時代に強制結婚させられた夫婦を描いた『三輪』、農村と近親相姦がテーマの『赤インク』、金に翻弄される女性の実験作品『20ドル』の計四本立て。
 明らかに自分はカンボジアの映像表現のレベルを舐めていて、本当に失礼いたしました。どの作品も画作りが丁寧で美しいのだけれど、出色は『赤インク』。他三作が首都プノンペンを舞台にしてしたのに対して、同作だけは都市を離れた地方の農村、その田園風景が精緻に映し取られていた。光が本当に素晴らしい。自然光が生み出すシーンは、奇跡みたいなものだ。
 不満があるとすれば、キャストの演技だろうか。ドキュメンタリー的な作品は別として、明らかなフィクション作品に関しては、もうちょっと頑張ってほしいなあと。そして演者が補完されれば、次の瞬間から普通に世界へ通用するレベルに跳ね上がるだろう。(400字)

http://2017.tiff-jp.net/ja/lineup/works.php?id=175

スヴェタ

 東京国際映画祭にて。カザフスタンの女性監督の作品。聴覚障害者の子持ち女性スヴェタが職場を解雇されて住居を追い出されそうになったため、殺人を犯して金を手に入れて、生き延びていくお話。
 しんどい。吃驚するぐらいしんどい。まず手話で会話が進行するので音が少なく、かつBGMもほとんど入らないので緊張感がすごい。また、何も起こらない長回しのシーンが複数出てくる。それが余計に緊張を増す効果になっている。更に出演しているのは本物の聴覚障害者だ(後でわかったことだが)。リアリティではなくて剥き出しのリアルだった。面白かったのか、面白くなかったのか、それすらよくわからない。
 特筆すべきことがひとつ。スヴェタが老女殺しを宣言したとき、会場から笑いが起きた。きっとみな、緊張に耐えられなかったのだと思う。その笑いが起きたときは、この会場の人々が作品をコメディとして捉えているのかと勘違いし、愕然としたけれども。(400字)

http://2017.tiff-jp.net/ja/lineup/works.php?id=27

Ank: a mirroring ape

 SFやファンタジーといった作品を強烈に定義するのは単語だ、神は細部に宿る。だから「京都暴動(キョウト・ライオット)という言葉を創造した時点で、この作品は勝利している。京都という語と暴動という語の取り合わせの悪さ、ゾクゾクする違和感、素晴らしい。
 とはいえ。それ以上でもそれ以下でも無い作品であったというのも、素直な感想。太秦を、金閣寺を、京都御苑を背景に暴走するライオッターたちは刺激的で、『アイアムアヒーロー』の清水寺を想起させたり『GANTZ』大阪編を思い出させたりするのだが、それらの作品以上にジャンプはしていない。
 カタルシスが欲しかった。未曾有の災厄を人類が打ち倒す様が読みたかった。ベタな展開と言われればそれまでだが、ベッタベタを期待したのだ。いけないことだろうか。主人公たち個々人のライフヒストリーがやや丁寧に描かれる割には、後半の展開へ積極的に寄与していないのも不満の残るところ。(400字)

 

 

Ank: a mirroring ape

Ank: a mirroring ape

 

 

 

新版 女興行師 吉本せい

 手に取った直接のきっかけは2017年10月現在放映中の『わろてんか』だが、吉本せいについてはずっと気になっていた。だからこの一代記、ようやく読めて良かった。
 ヨシモトと言えば吉本新喜劇である関西出身の自分にとっては、その吉本が第二文藝館という場末の落語小屋から始まったこと、漫才が「万歳」であり、サラリーマンのための娯楽芸能として発明されたこと、立役者がエンタツアチャコであったこと、何かも知らず、であるが故にとても新鮮だった。
 著者の筆致は、吉本せいという人間への愛憎が混交しているように思う。成功者への安直な肯定礼賛ではなく、かといって無思慮な貶めだけを綴っているわけでもない。読み始めは「もっと素直に褒めれば」と感じたが、終盤に至ると漂う哀感に読む心持ちがシンクロするようになった。見たこともない時代への郷愁だったのだろうか。あるいは大阪という土地そのものへの今更生まれた憧憬だったのか。(400字)